地球外知的生命体の描写が秀逸 『UFOはもう来ない』


月に裏側に他の恒星系からやってきた地球外知的生命体が建設した基地があり、そこを拠点に地球外知的生命体が、地球を監視している。さらに彼らの宇宙船が事故を起こし、地球外知的生命体の1人が京都の山科に取り残され、少年たちに自宅へと連れて行かれる。


なにやら怪しげなUFO特番風にいうと
「地球は地球外知的生命体に監視されていた! 不時着したUFOから乗員が回収されていた!」
となるだろうか。下手をすれば、「トンデモ」になってしまう題材を、明日にもこんな事件が起るかも、と思わせるリアリティある作品に仕立てた作者の腕には脱帽するしかない。

リアリティを支えるのは、地球の頭足類に相当する生物から進化した地球外知的生命体の「スターファインダー」描写が緻密であることだ。彼らの生態、文化、神話、宇宙観が事細かく設定されており、また、それにしたがって彼らは行動し、会話する。その根拠が、最初からあきらかになることはない。巻末に詳しい(架空の)資料がついているが、それを先に読んでしまうとおおいに興をそがれることになるだろう。一度は下にあるような「スターファインダー」の科白をよく分からないまま読み、再読時に「これはそういう意味だったのか」と気付くのが、楽しい読み方だろう。

〈トレイター(反逆者)中心説排斥の時代のように、彼らが古臭い誤ったパラダイムに支配され続けた方がいいというのか?〉
(二足走者め、何もこんなに惑星全体に分布しなくてもいいだろうに。女の子を食えばいいんだ)