郵便ポストが赤いのも憲法のせいです。

憲法に対する被害者意識もどこまでいくのだろう。

首相「こういう憲法でなければ、めぐみさん守れた」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130215-00000035-asahi-pol
 安倍晋三首相は15日、自民党本部で開かれた憲法改正推進本部(保利耕輔本部長)の会合で講演し、北朝鮮による拉致被害者横田めぐみさんを引き合いに出して「こういう憲法でなければ、横田めぐみさんを守れたかもしれない」と改憲の必要性を訴えた。
現行憲法のかくかくしかじかの条文のため、こういう法律が作れなかったため、拉致事件が起きた、と具体的に説明しないと、「郵便ポストが赤いのも共産党のせい」レベルの悪罵にすぎない。それとも、記事には省かれているけれども、具体的な説明があったのだろうか。その論理を考えてみたが、思いつかない。
  1. 太平戦争を、はやくやめなかった。
  2. ソビエト連邦が対日参戦し、北緯38度線以北の朝鮮半島ソ連軍の占領するところとなった。
  3. 北朝鮮が誕生し、拉致事件を起こした。
したがって、太平戦争をはやくやめていたら、拉致事件はなかった、という方が、「こういう憲法でなければ、横田めぐみさんを守れたかもしれない」よりも、論理的につながると思うぞ。
 出席者によると、首相は「日本は拉致犯の存在を知りながら手を打てず、拉致被害の拡大を許した」と言及。1977年に旧西独のルフトハンザ機がテロリストにハイジャックされた事件に触れ、「西ドイツは実行犯を射殺して人質を奪還し、世界から喝采された。西ドイツは何度も憲法改正をしてきたからできた」と強調したという。
これも憲法改正の回数と関係ないと思うぞ。日本でも犯人が射殺された人質事件は複数あった。また「こういう憲法」のもとの日本で、暴力によって落命する人間が非常に少ないのはどういうことなんでしょう? 安倍晋三首相は「軍隊を海外に出して邦人を守らねば」と言いたいのだろうけれど(おそらく)、ソマリアモガディシュでハイジャックから人質を奪還した西ドイツの対テロ特殊部隊は、軍の特殊部隊*1ではありません。*2

*1:対テロ特殊部隊は、ナチス武装親衛隊等の復活を恐れる世論を考慮して、国境警備隊に組織された。

*2:当時の西ドイツの基本法憲法)は軍隊をNATO地域外に派遣することを禁止していた。