珍しい犯罪、しかし、あなたも犯すかも〜統計法違反

http://mainichi.jp/select/news/20130223ddm041010100000c.html
市への昇格を目指していた愛知県東浦町の10年の国勢調査で居住実態のない調査票が大量に見つかった問題で、県警は22日、意図的に人口を水増ししたとして、前副町長の無職、荻須(おぎす)英夫容疑者(63)=同町緒川屋敷壱区=を統計法違反容疑で逮捕した。県警は、町幹部が主導した悪質な組織的不正とみて異例の強制捜査に踏み切った。県警によると、同法による逮捕は全国初。
逮捕は,はじめてかも知れないが、北海道羽幌町が1970年の国勢調査で人口を水増ししていたとして、当時の町長らが統計法違反などで有罪判決を受けたという今回と類似の事例があった。 今回の事件で適用される統計法の罰則規定はおそらくこれだろう。
第60条  次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
1 第13条に規定する基幹統計調査の報告を求められた者の報告を妨げた者
2 基幹統計の作成に従事する者で基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした者
それでは、統計行政の関係者でなければ、統計法に違反することはないのか、と言えば、それは違う。続く第61条はこうなっている。
第61条  次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
1  第13条の規定に違反して、基幹統計調査の報告を拒み、又は虚偽の報告をした者
2  第15条第1項の規定による資料の提出をせず、若しくは虚偽の資料を提出し、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者 (第3号は略)
第13条は、
(報告義務) 第13条  行政機関の長は、第九条第一項の承認に基づいて基幹統計調査を行う場合には、基幹統計の作成のために必要な事項について、個人又は法人その他の団体に対し報告を求めることができる。
2  前項の規定により報告を求められた者は、これを拒み、又は虚偽の報告をしてはならない。
3  第一項の規定により報告を求められた者が、未成年者(営業に関し成年者と同一の行為能力を有する者を除く。)又は成年被後見人である場合においては、その法定代理人が本人に代わって報告する義務を負う。
となっているから、たとえば、
国勢調査(これは基幹統計調査だ)の調査票の提出を拒否したり、うそを書いたら、罰金を科せられる
可能性があるということだ。道路交通法違反の反則金と違って、前科者になってしまう。もちろん、統計調査で権柄づくなやりかたが行われているわけではないし、調査拒否で有罪になった者も少なくとも戦後にはいない。もちろん、世の中のありかたは変わりうるし、別件逮捕の手段として利用される可能性もゼロではない。 まあ、統計というのは、インフラの一種だから、調査には気持ちよく協力するのが、みなが得をする道だろう。
統計と法令違反という話題を続ければ、統計では違法のものも、それはそれとして扱わなければならないという原則がある。かつて、食管法のもと、小売物価統計調査は、ヤミ米の価格もその調査対象にしていた。現在でも、労働関係の統計調査は、労働基準法違反の働かせ方/働き方を、そのまま扱っている。