『五稜郭残党伝 』も映画化されないかな。『許されざる者』

 1992年公開のクリント・イーストウッド監督・主演映画の舞台を明治初期の北海道に移したリメイク作品。西部劇を幕末・明治の北海道(あるいは蝦夷地)に移植する、と聞けば、私などは、小説では佐々木譲『五稜郭残党伝 』『北辰群盗録』などを思い出す。主人公が,もと伝習隊だったり、隠れキリシタンの集落での虐殺事件など、『五稜郭残党伝』と共通する要素もあるが、何らかの影響があったのかは分からない。明治初期の北海道を、あれほど見事に映像で再現できるのなら、『五稜郭残党伝 』あたりを映画にしてくれないかな。

 映画は北海道の自然描写がすばらしい。主人公十兵衛の住む小屋が、海岸沿いの原野に一軒建っている孤独な風景など恐怖を感じるくらいだ。

 映画では、明確な善悪の境界線が描かれない。倹しく生きる釜田十兵衛も1000円の賞金(明治19年の小学校教員の初任給が月俸8円だよ)*1に心を動かされ*2、敵役の大石一蔵のやっていることも私的な暴力を禁じて治安を守るためと解釈もできる。

 あと、小池栄子の演技が、観るまではノーマークだったが、よかった。

最後に、映画では、マイノリティへの迫害が悪しきものと描かれている。ちょっとしたことで「反日だ!」と憤激する方は、健康のために観ない方がいいかも

伝習隊ほか幕府陸軍について

*1:http://homepage3.nifty.com/~sirakawa/Coin/J022.htm

*2:金額が金額だけに話に尾ひれがついた、と考えるべきかも知れない