あいつは昔はワルだった。

敵の敵は味方」というわけか、中国と対立する国として、ベトナムをもちあげ、軍事的な同盟国として期待するという雑誌記事も見かける。また「頑張れベトナム」でgoogle検索してみると、結果はこんなものだ。

しかし、日本の右派が、ベトナム軍国主義膨張主義として批判していたこともあった。
昭和54年(1979年)1月6日付サンケイ新聞(現 産経新聞)の「正論」欄に林三郎東海大教授「ひっかかるベトナム援助」「膨張主義に手を貸すな」というタイトルで寄稿している。

要約すれば、ベトナムが経済的な苦境にあるのは、その軍国主義的思考や社会主義政策に原因がある。ベトナムカンボジアを侵略しており、そんな国を救援するのは、軍国主義膨張主義に手を貸すことになる、というものだ。

ハノイは「カンプチア救国統一戦線」を押し立て、ポル・ボト政権を打倒して、そのあとにカイライ政権同様のものを樹立しようとはかっている。ラオス同様に、カンボジアをも武力によって、実質的に支配下—でなければ勢力下—置き、旧仏領インドシナ全体の主人公になろうとしている。このハノイの政策は、軍国主義膨張主義というより他にあるまい。

私などは、ベトナムカンボジア侵略なしにポル・ボト政権のポル・ポト政権の大虐殺を止めることはできなかったんじゃないか、自国民を虐殺する政権より、「カイライ政権同様のもの」の方がましじゃないか、と思うのだが、彼の意見は違っているようだ。

(食料不足の)ベトナムを救援して、この危機を乗り切らせ、さらに経済建設を助けるのは、同国の社会主義政策の失敗の尻拭いをするだけでなく、軍国主義膨張主義に手をかすのと同じ結果になる。自国の防衛にさえ拒絶反応を示すほど反軍国主義的な日本人が、他国の軍国主義に手をかすなら、何とも皮肉なことではないか。

この一節のベトナム北朝鮮あたりに置き換えれば、少し昔によく見られた意見だ。

日本の右派がベトナムを持ち上げ出したのは、中国と対立しているからで、例えば、ベトナムとの間で、歴史認識問題が持ち上がったら、あっという間に「反日国家」「特定アジア」入りだろう。