syachiku1氏への4度目の回答

id:syachiku1氏への4度目の回答である。

白馬事件が事実であるとして、それは白馬事件の証拠でしかない。日本軍慰安婦制度で働いていた女性が強制連行された証拠を示すように求められて、白馬事件の証拠を持ち出しても意味が無いと言っているのである。

 ええーっ! 白馬事件(スマラン事件)と言うのは、日本軍がオランダ人女性を民間人抑留所からスマランにあった慰安所に強制連行し強制売春させた事件でなかったの? まさか、これは従軍慰安婦や軍慰安所の範疇から外します、というのではないだろうな。そのうち、syachiku1氏は「従軍慰安婦とは、完全自由意思で、日本軍将兵の性の相手を務めた女性と定義します」と言うかも知れん。まるで、ドッジボールで、背中にボールを当てられた小学生が、「背中はセーフだ。この瞬間にそうルールが変わったんだ」というみたいだ。小学生でも、さすがに許容されないだろうぜ。

確か、年齢に関する部分など一部について日本は留保しているはずだ。そもそもこれらの条約は慰安所の設置そのものを禁止するものでは無いのだから的外れではあるのだが(なら、未成年でない慰安婦は被害者ですらないのか?)・・・。

 国際条約について書いたのは、人身売買や強制労働についてどのように考えられていたか示すためだ。当時においても、手放しで容認されていなかったことが理解できただろうか。
慰安所の設置そのものを禁止するものでは無い」とは笑わせる。1930年代にはじめて設置された日本軍の慰安所を、明示的に取り締まる国際条約が、1920年代にあるものか。しかし、日本の刑法や、これらの国際条約を遵守していれば、従軍慰安婦制度は実現不可能だっただろう。syachiku1氏は、前の記事の私の論点をずらして、従軍慰安婦制度の国際法との適法性を論じて、問題がないと言いたいようだ。この問題について、以前におすすめした下記の書でも論じられているので、一読をお勧めする。

従軍慰安婦 (岩波新書)

従軍慰安婦 (岩波新書)

どちらにしても焦点になるのは、例えば未成年の女性を連行した事例に対し当時の日本政府がどう関与したのかであるが、実際には、それを取り締まる通達を出している位の関与しか明らかになっていない。結局の所これらの「違法行為」に、日本政府がどのように関与しているのか、具体的な証拠を明らかにしなければこれ以上議論のしようが無い。

 「それを取り締まる通達」というのは、陸軍省副官発北支那方面軍及中支派遣軍参謀長宛通牒、陸支密第745号「軍慰安所従業婦等募集ニ関スル件」 (1938年3月4日付)のことか。国際条約のときもそうだが、記事を書くときは調べてから書いてくれ。この副官通牒については、syachiku1氏の考えるような「悪徳業者を取り締まる」意図のものではなかったことは、下記を読めば分かるし、日本政府の関与についても分かるだろう。また、当初情報を知らされていなかった警察には、軍が慰安所の設置という公序良俗に反する事業をするなどとは、予想だにしていなかったことも分かる。
日本軍の慰安所政策について

 捨て置けないのは、「具体的な証拠を明らかにしなければこれ以上議論のしようが無い。」という記述だ。日本軍の暴力によって慰安婦にされた例を少なくとも1件、紹介したが,syachiku1氏の記憶から消えたのか。上位ページへのリンクをはっておく。
証言 | Fight for Justice 日本軍「慰安婦」―忘却への抵抗・未来の責任

「(通達だけでは)防ぎ切れなかった」という意味(業者の不法行為を防げなかった不作為)で日本政府に落ち度があるという意味合いなのかも知れないが、その場合今現在明らかに「主犯」扱いされている日本の立場は不当であると言わざるを得ない。

 syachiku1氏は、日本軍が慰安所を開設したことは認識している。軍がその将兵のために設置した施設で、誘拐や人身売買された女性が売春を強要されている。これほどの人権侵害に、軍の責任がないとしたら、この世に責任というものがなくなるだろう。それともsyachiku1氏は、軍が人権侵害を防ぐ努力を行っていたというのだろうか。例えば女性が誘拐や人身売買で慰安婦にされ、慰安所に送られてきた時、すみやかに移送責任者が処罰され、女性が軍の手配によって故郷に戻されたという事例をたくさん知っているのだろうか。
 日本軍が落ち度がなかったと主張するためには、それぐらいの努力をしていたという、事実が最低限必要だろう。