それでは、現代日本の役所で、こんなことがあったらどうだろう。

前回に引き続き、池田信夫氏のブログから。
池田信夫 blog : 朝日新聞の第三者委員会のためのアジェンダ

私が「人身売買は違法だったので政府の問題ではない」といっても、タブチ記者は「違法な人身売買をさせた日本政府が悪い」という。これは「麻薬売買は違法だから、売買をさせた日本政府が悪い」といって批判するようなものだが、この点はすでに日本政府が1992年と93年に謝罪しており、新たな請求権の根拠にはならない。

 池田氏は、法律で禁止されていることを政府がするはずがないというのか。それならば官公庁での不祥事というものはまるでないはずだが、残念ながらそうではない。「「麻薬売買は違法だから、売買をさせた日本政府が悪い」といって批判するようなもの」という反論も意味不明だ。麻薬売買を政府がさせれば、そりゃ批判を浴びるわな。アヘン戦争の時のイギリス政府みたいなものだ。
 思い切り好意的に想像するのだが、もしかしたら、池田氏は、麻薬売買を完全に阻止できないように、日本政府は人身売買を阻止できなかった。それを批判されるのは不当だと言いたいのかも知れない。
 ところが、軍の慰安所は、軍の意思により設置された施設なのだから、そこに人身売買によって女性が送り込まれてくることを防ぐことができなかったのは、能力の問題というより、意思の問題だ。さらに従軍慰安婦制度では日本政府が人身売買の受益者になっているのだから、批判を免れることはできない。
 
 例をひとつあげよう。
 現代の日本の市役所で、窓口業務を民間業者に委託したとする。業務を受託した業者が、役所の窓口で働く労働者に、最低賃金を下回る給料しか支払わなかったり、契約したとおりの休暇を取らせなかった。さらにたまりかねた労働者が労働組合を組織しようとしたら、それを妨害したり、団体交渉を拒否したとする。これら違法行為が、公になったとき、市役所が「不当労働行為は違法だから、市役所の問題ではない」とか、「それは業者のしたことだから、市役所は関係ない」と弁明したら、受け容れられるだろうか。