『ネプチューンの迷宮』


架空の国ポーレア共和国を舞台にした冒険小説だ。
ポーレア共和国のモデルになったのは、太平洋のナウル
ナウルでは、唯一の産業であるリン鉱石採掘業が衰退したため、財政と経済が破綻した。

小説の中のポーレア共和国でも、唯一の輸出品であるリン鉱石の枯渇が近づいてきたため、国の行く末をめぐって,大統領派と反大統領派の対立が深まっていた。そんな中、職業潜水士の宇佐美は、海没していた旧日本海軍零戦を引き上げるために、ポーレア共和国に入るが、国をゆるがす陰謀に巻き込まれていく。

冒頭を除けば、この小説の中で経過する時間は、1日に満たない。凝縮感、緊迫感は類のないものだ。ストーリーはF・フォーサイス某作品を反対側からみたら、といったところだが、プロットは精緻だ。主人公が接する一見無関係なニュースや、警察長官がポーレアの治安状況を考える場面に、伏線が潜んでいる。また、無駄な登場人物もいない。

ポギポギの中だ
冒険小説は、痛快さがなくてはいけない。上は宇佐美の台詞だが、彼がこの台詞を口にする場面が、この作品で最高のカタルシスを味わえるところだ。ネタバレを避けるが、読んでいただければ同意してもらえるだろう。