記述の誤りは、筆者の責任です。〜『永遠の0』の主要参考文献
『永遠の0』について、百田尚樹氏がこんなことを言っていた。
『永遠の0』はつくづく可哀想な作品と思う。文学好きからはラノベとバカにされ、軍事オタクからはパクリと言われ、右翼からは軍の上層部批判を怒られ、左翼からは戦争賛美と非難され、宮崎駿監督からは捏造となじられ、自虐思想の人たちからは、作者がネトウヨ認定される。まさに全方向から集中砲火。
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2013, 9月 25
「軍事オタクからはパクリと」言われているということは、前回記事で書いたようなミッドウェー海戦についてのおかしな描写は、百田尚樹氏が参考にした書物のせい、と可能性がある。当ブログへのブックマークコメントにも同じ主旨の意見があった。そこで、巻末に主要参考文献としてあげられている、書物のうち、
を読んでみたのだが、ミッドウェー海戦の経過が書いてあるのは、最後の『零戦燃ゆ』だけだが、その記述は、『永遠の0』と大きく異なる。兵装転換と索敵機による米空母発見は、第一次攻撃隊の帰投前だ、と書いてある。ミッドウェー島から飛来したPBY飛行艇(空母からの索敵機でなく)が日本海軍機動部隊を発見し、その電信を米機動部隊が受信したことも、知ることができる。百田氏が、この本を「パクって」いたのなら、あのような無様な描写にならなかったはずだ。むしろ、参考文献をちゃんと読んだか、疑念がわく。
『永遠の0』はフィクションだから、史実を改変したのだ、と言うのかも知れない。しかし、架空の人物を主人公にしたタイプの歴史小説は、主人公やその行動について大胆な嘘をついてもよいが、その嘘を史実にうまくとけこませないといけない。ましてや、背景となる歴史に誤りがあったら、作品が台無しになる。
『永遠の0』の巻末に児玉清がこんなことを書いている。
なまじの歴史本などより、はるかに面白く戦争の経緯とその実態を教えてくれる点でも実に秀逸な物語だと思うのは僕だけであろうか。
いや全然思いません。