嘘をつかずに人をだます〜映画『イニシエーション・ラブ』

「最後の5分、全てが覆る。あなたは必ず、2回観る。」と強気なキャッチコピーが付いていた映画だ。
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 原作を読んでいた私は、「映像化不可能」と言われる、あのトリックをどう再現するのだろう、という興味を満たすために観た。なるほど、あの種類のトリック(白文字で隠す:叙述トリック)を映像で表現するのに、あの方法があったのか、と膝を打ちたくなった。
 一緒に鑑賞した原作未読の妻は、ラスト前まで、この映画を前半は『電車男』。その後、素朴だった男が傲慢になってしまい、女性との関係が破綻する映画と解釈していた。前半と後半の転換を「さすがにあれは大げさすぎる、と思ったけれど、堤幸彦監督ならやりそうなこと」と思っていたそうな。堤監督が「映画やテレビなどを“そういうもの”だとして見るという、見る方の習慣みたいなものを利用した」と語っていたとおりである。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150531-00000007-mantan-ent&p=1
この映画、登場人物は嘘をつくが、小説で言えば地の文にあたる映像では、嘘をついていない。嘘はついていないが、あれを映画の演出だ、と観客を誘導する仕掛けがある。さらに映画の公式サイトを見直してみたが、ストーリーや登場人物紹介も嘘ではないが、真実ではない記述になっている。

 この映画を観るにあたって私が不安だったのが、原作のトリックの再現度と、もうひとつは、ヒロインの前田敦子の演技だった(ファンの方ごめんなさい)が、役にうまくはまっていた。『TRICK』の時も、仲間由紀恵に不安を覚えたが、観始めたら懸念が吹き飛ばされたのだから、キャスティングの妙と言うべきかも知れない。