『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』

『マッドマックス』『アイ・アム・レジェンド』など文明崩壊後の世界を描いた映画は少なくない。小説だと、ジョン・ウィンダムの『トリフィド時代』、小松左京の『お召し』や『復活の日』の後半も、それに分類できるのかも知れない。そうした作品の多くは、旧文明、つまり現在の文明の遺産を食いつぶしながら、少数の人間が生き延びている様子が描かれている。『この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた』で、筆者のルイス・ダートネルが「猶予期間」と表現した時期の話だ。しかし、猶予期間はいつか終わってしまう。その前に残された人々は、文明の再建をはじめなくてはならない。本書は文明の再建に役立つ(?)知識をいくつも書いていて、SFを読む面白さがある。再建される文明の姿を想像すると、融点の低いアルミニウムが、金属として多用されているだろうし、本書に直接の記述はないが、薪の消費を抑えるため太陽熱の利用が盛んであるかもしれない。

本書を読んで痛感するのは、文明は、布や石鹸、レンガ、陶磁器などの地味なもので支えられていることだ。それらはつまらなく見えるが、一旦、文明が崩壊すれば、極めて貴重で手に入れがたいものになってしまう。