旧日本海軍は空母を重視していたか

「大艦巨砲主義」の語意 - 誰かの妄想・はてなブログ版
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「大艦巨砲主義」の語意 - 誰かの妄想・はてな版

"日本の戦術思想が米英に比べても「大艦巨砲主義」に偏っていたと言っても大過ないでしょう"開戦時正規空母保有数は日9米7。

2015/06/22 16:41

 日本海軍は、大艦巨砲主義でなく、空母機動部隊を主力とする航空主兵主義にめざめており、その威力は真珠湾攻撃で遺憾なく発揮された。むしろ旧弊な大艦巨砲主義であった米海軍が、空母の威力を学び、強大な空母機動部隊を組織して日本を敗北に追い込んだ。日本海軍が大艦巨砲主義であるという主張に対して、こうした一種の「神話」がぶつけられることがあるわけだが、このブックマークコメントを検討してみよう。
 日米開戦を日本が9隻、米国が7隻の空母を保有して迎えたというのは正しい。それでは日本海軍の空母戦力が米海軍のそれを上回っていたと言えるだろうか。両国海軍の空母の艦載機数に着目して表にしてみた。
まず日本

艦名艦載機数
鳳翔21
赤城66
加賀75
龍驤36
蒼龍57
飛龍57
翔鶴72
瑞鶴72
瑞鳳27
483

つづいて米国

艦名艦載機数
レキシントン78
サラトガ78
レンジャー76
ヨークタウン90
エンタープライズ90
ワスプ76
ホーネット90
578

 確かに空母の数は日本が多いのだが、それぞれの艦載機の数は米空母と比べて少なく、合計数しても8割程度だ。空母の価値を決めるのは艦載機数だけではないだろうし、その艦載機数も搭載する機種によって上下するが、例えば日本の瑞鳳が、米国のエンタープライズより強力な空母だとは言えない。

 さらに目立つは、開戦時の空母の建造状況だ。日本海軍が開戦時に建造中だった空母は、大鳳ただ1隻で、他は客船等から改装中のものが3隻あっただけである。(祥鳳、隼鷹、飛鷹)一方、米海軍は、1940年に発注した11隻(!)のエセックス級空母うち5隻を建造中だった。(エセックス、ヨークタウン、イントレピッド、レキシントン、バンカーヒル。既存の艦名と重複があるのは、誤記ではなく、戦没艦の名前を新造艦が引き継いだためである。つまり、米海軍は日米開戦がなくとも、空母の建造をすすめ、日米の空母戦力の差は開いていっていただろう。もちろん真珠湾攻撃がその傾向を増強しただろうけれど、日米開戦を受けて空母の建造をはじめたわけではない。
 
 日本海軍が新しく空母の建造をはじめたのが、ミッドウェー海戦の敗北の後である。それらの艦は、1944年6月のマリアナ沖海戦に間に合うことはなかった。旧日本海軍が、米海軍より空母の価値を認めていたとはとても言えない。