戦前の朝鮮が植民地でないと叫んでも、説得力ないよな。

下のツィートを読んで、考えたこと。司書講習のなかで、日本が朝鮮を植民地支配したことに言及したところ、受講生から、「植民地支配」でなく(対等の)「韓国併合」だと抗議を受けて、教員が謝罪させられた顛末が書かれている。

 まさか、大学や教員が、「植民地支配」は誤りで正しくは(対等の)「韓国併合」だと考えていないだろう。(そう思いたい)
 多くの人が、他人の怒りに直面した時、その怒りが正当なものか考えるより、まず相手を怒らせたことを申し訳なく思う、という奇妙な習性を持っていることが、明らかに相手の抗議がおかしいと思っていても、とりあえず謝罪するという傾向につながっているのだろう。たいていのクレーム対応のマニュアルでも、相手の怒りをどう慰撫するかが、中心に記述されている。


 上のように日本と韓国が対等に合併したと本気で、考え、主張している人もいる。
 こうした主張は、慰安婦は待遇がよかったのだから、奴隷ではない、という主張に一脈通じるものだ。だが、対等の合併だったという主張は、日本統治下の朝鮮で、日本の内地とは異なる法制度が適用されていた事実と矛盾する。現代の企業でも、合併後も異なる人事・給与体系が適用されていたら、到底、対等の合併だ、とは言えないだろう。
参考 4-2 戦前の朝鮮は日本の一地方に過ぎなかった? | Fight for Justice 日本軍「慰安婦」―忘却への抵抗・未来の責任
 植民地というものの説明の方法のひとつに「外国向けには自国、自国向けには外国」というものがある。戦前の朝鮮の例では、外国に対しては朝鮮を日本の領土として干渉を拒みつつ、国内向けには外地として異なる法制度を適用していたことが、これにあたる。
 こうした事実を無視して、「朝鮮は日本の植民地でなかったんだ」と叫んでも説得力ゼロである。
 
 付け加えると、従軍慰安婦問題否認論者で「醜業を行わしむる為の婦女売買取締りに関する国際条約」(1910年)や「婦人及児童の売買禁止に関する国際条約」(1921年)の適用が朝鮮半島などについて留保されていたことを得意げに持ち出す人がいるけれど、彼・彼女らの中で、「朝鮮は日本の植民地でなかったんだ」と言う人は、まさかいないよね。