それなら、再分配政策しかないじゃないか。

そもそも、ピーター・シンガーの意見に賛同できない〜ふたたび障害児の排除について - davsの日記
上記の記事で言及した作家の橘玲氏が、経済格差は遺伝に起因するという記事を書いていた。

非正規という身分で差別 貧困層に落ちていく希少性を持たない若者 - ライブドアニュース

前回は、障害をもった子どもを排除する主張への抗議を、「空虚なヒューマニズム」と冷笑するために、ピーター・シンガーを紹介していたが、今回は彼が持ち出したのは、以下のような遺伝と知能と経済的成功との関係についての主張だ。

 知識社会における経済格差は知能の格差だ。知識社会とは、定義上、知能の高いひとが経済的に成功できる社会のことだ。だからこそ、「教育によってすべての国民の知能を高める」という理想論が唱えられるのだが、いまやその前提は崩壊しかけている。

 先進国で社会が二極化するのは、知識社会が、知能の高いひととそうでないひとを分断するからだ。知能のちがいは、環境ではなく遺伝によってほぼ説明できる。だからこそ、どれほど教育にちからを注いでも経済格差は拡大するのだ。

 橘氏は、前回の記事もそうであるが、他人の主張は書くけれど、自分自身の主張をはっきりと書かいていない。だから彼が記事で言いたいことは想像するしかないが、彼は自分が紹介した遺伝と知能についての主張に賛同しており、経済格差を是正しようとする、こころみは間違っているという方向に読み手を誘導しようとしているのだろう。

 しかし、橘玲氏が、紹介した主張が正しいとしても、そこからは、経済格差を是正すべきでない、と結論を導くことは出来ない。むしろ、高所得者から、累進課税(高額の相続税でもよいが)で、低所得者に財を再分配すべき、という主張の強力な根拠ともなる。

 そんな馬鹿な、なんで俺の努力で稼いだ金を、怠け者の貧乏人に取られなければならないんど、という人間もいるだろう。しかし、こういう反論に直面することになる。おや、あなたがお金持ちになったのは、たまたま遺伝で知能に恵まれたおかげですよね。努力のたまものではありませんよ。貧しい人は、遺伝に恵まれず、貧しくなったわけで、自分ではどうしようもない理由で、貧しいわけです。たまたま運がよかった、あなたがより多く負担することに何か問題でもあるのですか。

 橘玲氏が、紹介した主張が正しいとすると、経済的な成功者は、たまたまの遺伝でその成功を手にした訳で、その富を独占する理由はない。また、貧しい人は、責任を問うことができない理由で貧しい訳だ。