特攻の戦果は圧倒的か?(その2)

前回の記事で紹介した『『永遠の0』と日本人』に特攻効果率56パーセントという数字が、アメリカ海軍の機密文書に載っている、という話が載っている、ということを紹介した。
その元記事を探した。ニュースサイトでは元記事は削除されていたが、ありがたいことに『写真が語る「特攻」伝説―航空特攻、水中特攻、大和特攻』(原勝洋著,KKベストセラーズ社)に当該の機密文書の写しが掲載されていた。(p288‐294)


たしかに、命中と至近突入を合わせて56パーセント、という数字が記された表が載っている。その分母は、特攻を試みた機数となっている。ところが、別の表に、米艦隊の対空砲火にさらされた敵機のうち、特攻を試みた機の数と割合が、記載されており、特攻を試みた機数が一致している。したがって、特攻効果率56パーセントというのは、米艦隊の対空砲火圏内まで到達できた特攻機の56パーセントが何らかの損害を、米艦に与えたということだ。

一方、特攻機に対する対空砲火の効果についての表もある。この表の特攻機の数は、特攻を試みた機数よりも多くなっている。このずれは、何によるものか不明だが、表に付けられた米軍のコメントでは、特攻機に対する対空砲火の効果は、爆撃や雷撃に対するそれよりも大きいとある。

総じて見ると、当該のアメリカ海軍の機密文書は、沖縄戦を前に特攻機に対策を考えるために集計したもののようで、これをもって特攻の戦果は圧倒的、というのは相当無理があるだろう。