中国海軍が機雷敷設でシーレーンを封鎖!〜でも、一体、どこにどうやって敷設するのだろう。

 中国脅威論は右派メディアの定番のコンテンツだが、1980年代のソ連脅威論の焼き直しというべきだろう。中国脅威論とかつてのソ連脅威論が、大きくと違うのは相手の軍事力に対する評価だ。かつてのソ連脅威論では、ソ連軍は強大さを強調することが常のことだった。いわく、ソ連空軍は強大で、有事になったら航空自衛隊は1週間で壊滅する、とか、ソ連軍の自動車化狙撃師団は、陸上自衛隊の師団より、火力も機動力も圧倒的に優れており、それが北海道を占領するために上陸してくる。などと言われていたものだ。ところが、これが中国が相手になると、中国軍は弱い、戦争になれば自衛隊が勝つ、と言った楽観的、威勢のいい主張が目立つ。むしろ、戦争になったら中国を目にもの見せてやれるのにと思っている人が多い。

従って、下のように中国海軍が侮れないという下のような記事は珍しい。
【田中靖人の中国軍事情勢】実は侮れない中国海軍の新型機雷…もし大量敷設でシーレーンを封鎖されたら?(1/6ページ) - 産経ニュース

 中国海軍が機雷を大量に敷設してシーレーン(文脈からすれば、日本のシーレーンのことだと考えられるが、記事中にあきらかな記述がない)を封鎖するというタイトルだが、はっきり言えばタイトル倒れとしか、言いようがない。機雷で日本のシーレーンを封鎖するには、上海の沖に機雷を敷設しても駄目で、例として出されている、米軍が実施した「飢餓作戦」のように関門海峡や瀬戸内海に機雷を敷設しなければならない。太平洋戦争末期の米軍はB29で機雷を敷設したが、それを日本軍は阻止できなかった。また、機雷そのものも、日本軍が除去できない起爆方式のものだった。

 中国海軍が機雷を大量に敷設して日本のシーレーンを封鎖する、というのなら、中国海軍が日本側に妨害されずに、日本側に除去できない機雷を敷設できる能力があることを書かなければいけないが、漁船を改装して機雷敷設に使える、と言う程度のことしか書いていない。さらに、記事の最後に「(機雷戦について)世界最高水準の実力を持つ海上自衛隊の役割に注目が集まることになる。」と自衛隊の機雷戦能力の高さをうたっているのだから、やはりタイトル倒れの記事というしかない。