池田信夫氏の誤解している「三段論法」

 池田信夫氏は立憲主義も三段論法も誤解しているようだ。
池田信夫 blog : 朝日新聞論説主幹・根本清樹氏の誤解している「立憲主義」
池田信夫氏は、憲法は一般の国民ではなく、国家権力を縛るものだ、という立憲主義の考えに反対して、国民は憲法を守らなければならならないと主張する。
その根拠として下のような論理を持ち出す。

すべての法律は憲法に適合しなければならないのだから、その法律を守る国民は憲法を守らなければならない。これは自明の三段論法である。

 三段論法の形式にすらなっていない。

 池田氏にサービスして、三段論法の形式になおすとこうなるだろう。

  • 大前提: すべての法律は憲法に適合しなければならない。
  • 小前提: 国民は法律を守らなければならない。
  • 結論 : ゆえに国民は憲法を守らなければならない。

 一見して、池田氏の「三段論法」が誤っていることが分かる。大前提も小前提も、それぞれは正しいが、結論が誤っている。池田氏の論理は、次のような詭弁と類似したものだ。

  • 大前提: 「グー」は「チョキ」に勝つ。
  • 小前提: 「チョキ」は「パー」に勝つ。
  • 結論 : ゆえに「グー」は「パー」に勝つ。

 上の結論は、われわれがよく知っているジャンケンのルールに反している。上の詭弁は、ジャンケンのそれぞれの手が、一直線に並ぶような強さを持っており、その強さで勝敗が決まる、という誤った前提を置いているのだ。池田氏憲法>法律>国民と直線上に制約の力がはたらくという前提を、断りなしにおいているが、そのような前提は誤りだ。
 例えば、憲法36条で公務員による拷問が禁止されており、これがあるゆえに、警察官による拷問を認めるような法律は制定することはできない。しかし、国民はこの条文によって何ならかの義務を課せられているわけではない。

憲法に関して、正しい三段論法をつくると下のようなものになるだろう。

  • 大前提: 公務員は、憲法を尊重し擁護しなければならない。
  • 小前提: 安倍首相は公務員である。
  • 結論 : ゆえに安倍首相は憲法を尊重し擁護しなければならない。

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