「自民党憲法改正草案」part2 安全保障

前回に引き続き自民党憲法改正草案について、今回は第2章の安全保障をとりあげたい。
自民党らしく(?)軍の保有を認めているのだが、軍に対する無邪気なほどの信頼感がうかがえる。国家に暴力装置が必要なのは、賛成するが、ブレーキのない自転車が実用品でないのと同じく、軍には行動の歯止めが欠かせない。
しかるに「草案」では、国防軍が「できること」についての条文だらけだ。第9条の2第2項に

2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
とあるぐらいで、国防軍ができないこと、してはいけないことの規定が憲法上にない。国防軍の統制については法律に投げてある。なまぬるい歯止めも可能であり、自民政権下で国防軍が設立されたら、国防軍の行動に対する歯止めは、おそらく小さいものになるだろう。 国防軍が暴走しないためにいかなる歯止めを用意すべきか。 scopedogさんがアイデアを書かれている。
「護憲勢力は第二防衛線を準備すべきかも」『誰かの妄想・はてな版』 1.内閣は、国民からの志願者によって構成される国防軍を設置することができる
2.内閣は、国防軍の員数・組織の大綱を予算によって明らかにせねばならない
3.国防軍は、内閣総理大臣が宣言する緊急事態を除いて、憲法が明文で認めている場合に限って出動することができる
4.国防軍は、国会の議決があれば出動を中止せねばならない
5.国防軍は全ての人の基本的人権を守ることを目的とし、その目的を達成するため、良心に従い、内閣総理大臣の指揮・命令に服さねばならない。
1によって、徴兵制を禁止にしていることは読み取れるけれども、もっと直截な書き方をすればこうだろうか。 内閣は、法律の定めるところにより、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を設置することができる。
2 国民は国防軍への参加及び国防軍の活動への協力を強制されない。
皆が、国防軍への協力を拒否したらどうするのかと言われそうだが、国民の自主的な協力を得られない軍隊なんて存在意義があるのだろうか。 3については、「内閣総理大臣が宣言する緊急事態を除いて、」はいらないんじゃないかな。 4に関連して、例えば「草案」のいう「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持」する活動を行うためには、各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要、ぐらいハードルを高くする必要があるだろう。 5については、こういうのはどうだろう。 国防軍に属する軍人は、任務を遂行するにあたって、この憲法国際法を遵守しなければならない。
2 国防軍に属する軍人は、この憲法国際法に反する命令を拒まなければならず、かかる行為を理由として処罰されない。
また、旧軍の憲兵が、国民の思想弾圧まで行ったことを考えれば、次のような条文も必要だろう。  国防軍に属する軍人は、文民に対して、司法警察権を行使できない。 この「自民党憲法改正草案」シリーズはpart3の国民の権利及び義務編に続く。(かも) 【関連記事】 「自民党憲法改正草案」part1 天皇と日の丸・君が代 - davsの日記
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