別に「有り難い」わけではない〜サムスイング・グレイトあるいは空飛ぶスパゲッティ・モンスター

【日本人の座標軸(25)】ヒトのDNA情報量は百科事典千冊分…「有り難い」の本当の意味を忘れるな(1/2ページ) - 産経WEST

 このように非論理的な文章を高校の校長だった人間が書くことも、新聞がチェックやアドバイスもなしに(としか思えない)にコラムとして掲載するというのも驚きだ。
 ツイッターでも事実誤認を指摘されている。



いくらお金を持っていても、「有り難い」ということの意味が分からぬ者に幸せは訪れまい。いつもそう思うのだが、素晴らしい一文に出会った。
 《細胞1個の核に含まれている遺伝情報は32億個の科学の文字で書かれているが、その情報量は千ページの本にすると3200冊に相当する。それほど膨大な情報が、1グラムの2千億分の1でしかない細胞の核の中に書かれている。
 書いたのは誰か。勿論、人間ではない。かといって自然にできあがったものでもない。それは「偉大なる何者か=サムスイング・グレイト」である。これを有り難いという以外に表現する言葉はない。

 これをある学者がどれほど有り難いことか計算したところ、1億円の宝くじが百万回連続して当たるほど有り難いことだそうだ。そんな有り難い細胞60兆個で私たちの体はできているのだ。人は生きていること自体が有り難いことなのだ(筑波大学名誉教授、村上和雄氏)》

足立勝美氏の引用文だと、村上氏以外の学者が、計算した、ととれる。しかし、

などを見る限り、「1億円の宝くじが百万回連続して」というのは、村上和雄氏の持論のようだ。いずれにしても、「細胞1個偶然生まれる確率は、1億円のくじが連続100万回当選」するような確率というのは、算出方法を示されておらず、根拠に乏しそうだ。足立氏の引用部分に至っては、何が1億円の宝くじが百万回連続して当たるほどの確率なのか分からない、ひどい文章だ。ただし、これは村上氏の責任なのか、足立氏の引用が誤っているのかは分からない。

 さらに、足立氏が引用した文は、ひどく矛盾している。何者か(例えば空飛ぶスパゲッティ・モンスター)が意志をもって、生命を創造した、ということが真なら、生命の誕生は「1億円の宝くじが百万回連続して当たるほど有り難いこと」でなくなる。チンパンジーが、コンピュータのキーボードを乱打したら、日本国憲法前文になったら、それこそ「有り難いこと」だが、私がそれと意図して書いても、「有り難いこと」ではない。

 生命が誕生するのは、ほとんどあり得ないほどの低い確率で、きっと空飛ぶスパゲッティ・モンスターが(しつこい?)創造したのだ、ぐらい書いておけば、表面上のつじつまはあったのにね。