秦郁彦氏はこの世に組織的犯罪というものがないと考えているのだろう。

下の記事にある、秦郁彦氏の発言が色々ひどい。
【詳報】「強制連行があったとするマグロウヒル社の記述は誤り」従軍慰安婦問題で、秦郁彦氏、大沼保昭氏が会見 (1/2)

アムステルダムの"飾り窓の女"というのは有名ですよね。我が東京においてもソープランドがあるのはご存知だと思いますが、こういう話題をオランダ政府が、あるいはヘッドラインで報道するとか、こういうことはないわけですね。いわば一種の常識であります。しかしながら、なぜ日本軍の慰安婦問題だけが大問題になってしまったのか、誠に不思議であります。

 そりゃあ、当時の日本の刑法に照らしても問題ありありの事業に軍が関与していたら、大問題になるわ。

私は「強制連行」には条件を付けています。官憲による組織された強制連行、ですね。ものには例外があります。個人的な犯罪ですね。新聞には毎日、日本の警察官の犯罪の話が出てますよね。かといって日本の警察が全部そうだというわけではないですよね。
それから命令違反がありますね。どこの国の軍隊でも命令違反はあります。ですからインドネシアの話も、命令違反や個人的な犯罪だったと考えております。

 スマラン事件などを念頭においた発言だろうが、「警察官の犯罪は全て個人的な犯罪」という前提を検証なしにすべりこませて、「インドネシアの話も、命令違反や個人的な犯罪だった」という結論を導いている。警察官が、非番の日に窃盗をしました、という個人的な犯罪もあるが、組織的な不正経理や違法捜査を人的とは言えない。そうした犯罪を組織ぐるみでなく、個人的な犯罪だと、幕引きをはかるのもよく見る光景だが、秦氏はそうした弁明で納得するのかもしれない。第一、「警察官の犯罪は全て個人的な犯罪」という命題が証明されても、従軍慰安婦について何か証明できるとも思えない。
 
 スマラン事件は、軍が慰安所の設置を計画したことがきっかけで起こったことであり、後にオランダによって裁かれた責任者が個人的な欲望を満たすために起こした事件ではない。組織による組織のための犯罪だ。だいたい命令違反や個人的な犯罪だったとすれば、どうして2か月も放置されていたのだ。憲兵は怠業していたのか、日本軍の軍紀が崩壊していた、とでも言うのか。
 秦氏は、大元帥が命じた犯罪行為でなければ、日本軍の組織的犯罪ではなく、個人的な犯罪と言いたいのかもしれない。そうだとしたら、ナチスホロコーストも、組織的犯罪でなく、個人的な犯罪の集積だという弁明も通るだろう。