親日国の条件〜台湾の慰安婦記念施設建設
下の記事について。
まず１について、「わが国の立場」というのは、一体何なのだろう？ 人身売買や奴隷的労働など、大したことではない、ということなのだろうか。この記事を最初に読んだ時、さすがに様々な留保（例えば、慰安婦全員が暴力を使って連行されたという展示になるのなら、とか）をつけて発言したのだろうと思っていたが、下のリンク先で記者会見の動画を見ると「わが国の立場」という言葉を何の説明もなしに使っていた。
【6月5日午後】菅義偉 官房長官 記者会見 生中継 - 2015/06/05 16:00開始 - ニコニコ生放送
問題の質疑は36分40秒あたりから始まるが、文字おこしをしてみた。記者の名乗りは聞き取れなかった。
記者
台湾で、今年ですね。慰安婦の記念館が建設されるとの報道がありました。これは台湾初の施設として完成されれば国際的に影響が非常に大きいものだと思われますが、これについてどう思われますか。また政府としてこの情報をいつキャッチされたのか、その後何かしら、アクションをとられていたのか教えてください。
官房長官
そうした動きが本格化するようであれば、政府として当然わが国の立場と相いれませんので、そこは台湾側に様々なルートを使って、しっかりわが国の立場というものを説明して、そうしたことを取りやめるように、つめていきたいと思います。
これが全てだ。わが国の立場ってなんだよ、河野談話との整合性は、と記者も再質問すべきとは思う。
どうやら、大日本帝国における人権侵害について、記念施設を建設することが、日本国の立場と相いれないこと、内政干渉すべきこと、というのが政府の考えらしい。それにしても、河野談話との整合性をどう考えているのだろうか。外国相手にもこの有り様なのだから、国内において大日本帝国の人権侵害について語ったり、文章を書くことを政府がどれだけ苦々しく考えているのか、分かるというものである。
２の記事には、台湾は親日国だと思っていたのに裏切られた！ 失望した！ という主旨のコメントが蝟集しているが、こうしたコメントを書き込む人にとって、親日国というのは対等の関係にあるものではなく、「下」にとどまっている限りのものなのだろう。
これで友好国の認定が外されるなら、広島平和記念資料館がある日本は、アメリカ合衆国の友好国でないのだろう。
どうやら、親日国認定され続けるためには、とてつもなく高いハードルがありそうだ。少なくとも下の３つの条件はクリアしないと、ネトウヨのみなさんは満足しないだろう。
- 日本の過去や現在の人権侵害について言及しない。
- 日本の古今の文化を愛好する人間が多い。しかし、日本の水準を凌駕したり、日本の文化に影響を与えてはならない。*1
- その国からの旅行者も、日本の文化やおもてなしを称賛するだけで、問題点を指摘したりしない。
日本と実質的な国交がない国や、人間に例えれば「私は不幸でもいいの。あなたが幸せなら」という、昭和の歌謡曲にしか登場しない女性ぐらいのマゾでないと無理だろう。
