他人の権利を制限するために第三者の権利を擁護する、あるいは擁護するふりをする人〜補助犬の入店拒否事件

http://mainichi.jp/select/news/20151009k0000e040232000c.html
梅田の阪急百貨店の飲食店が補助犬の入店拒否…啓発イベント直後になぜ? - ライブドアニュース

補助犬の啓発イベントを開いた百貨店にある店舗に、補助犬の入店を断られたらそれは衝撃的だろう。ブラックジョークにしても出来が悪い。

想像だが、店には、補助犬の同伴を拒むことができないと知識も、法律の知識はなくとも、イレギュラーな事態に対応する権限のある者がいなかったのだろう。店員は、動物を店に入れてはいけない、トラブルがあったら、叱責される、悪くしたら仕事を失うと恐れて、記事のようなことになったのかも知れない。

 今回の事件では、阪急百貨店が、迅速に対応したとのことで、幸いなことであった。

ただ、この事件へのコメントを見ていたら、マイノリティが権利を主張することへの嫌悪を含むものがみられた。

ナースとソースのとんかつ日記:これは強者の差別なのか、それとも弱者の横暴なのか…

確かに補助犬は障害者の方に有益なものであるが、動物嫌いの人、動物の臭いが苦手な人、動物の毛でアレルギーが起きる人はどうなるのか?疲れているのは橋爪さんだけではなく買い物に疲れた他のお客も来る店だ。動物の毛にアレルギーを持つ人がせっかく落ち着こうと店にいたら、我が物顔で動物を連れた人がやってくるというのは迷惑とは思わないのだろうか?

 補助犬ユーザーの障害者に対して、犬嫌い・犬アレルギーの人間が対置されているが、本当に犬嫌い・犬アレルギーの人間に配慮するなら、公道や公園での犬の散歩を禁止するぐらい言ってもよさそうだ。補助犬の数が、2015年10月1日時点で1115頭である(犬の登録頭数は600万をこえる)ことを考えれば、犬嫌い・犬アレルギーの人間が、飲食店で補助犬に遭遇するのは、ごく希なことだろう。犬嫌い・犬アレルギーの人間の権利を擁護するために、補助犬ユーザーの入店を制限するのは、手段としてもバランスを欠いているし、有効とも言えない。

百歩譲ってウェルカムリストは無いとしても、シールが貼ってないイコール一般的なお店、即ち動物お断りのルールがあるという事なのだから、それ前提でお店に入る前に「補助犬OKですか?」と聞いてから入るのが常識ある大人のやる事じゃないの?何で当たり前のように席についてるの?
(中略)
なんていうか、弱者は保護されて当たり前みたいな感覚で違和感を覚えた。

記事は差別と無理解と戦う人たちみたいな文体で綴られているが、何のことはない。

単なるクレーマーである。

阪急百貨店が補助犬の入店を認めた⇒催事場で啓蒙イベントやったら盛況だった(200人が盛況かどうかはさておき…)⇒だから同じフロアの店に入っても大丈夫だろう(シールないけど…)というのは橋爪さんの勝手な思い込みであり、社会に認められたルールではない。

「社会に認められたルールではない」と言っても、不特定多数の者が利用する施設での身体障害者補助犬の同伴を拒んではならないというのは、身体障害者補助犬法第9条で定められていることなのだ。

追記記事のナースとソースのとんかつ日記:これは強者の差別なのか、それとも弱者の横暴なのか…(追記)で、

今回の阪急百貨店の場合、この『不特定かつ多数の者が利用する施設』に該当すると思われる。なので原則的に拒んではならないのであるが、同条に『ただし、身体障害者補助犬の同伴により当該施設に著しい損害が発生し、又は当該施設を利用する者が著しい損害を受けるおそれがある場合その他のやむを得ない理由がある場合は、この限りでない。 』とあるので、結局拒めてしまうという骨抜き法律であるのが問題である。

 と施設側の恣意的な判断で補助犬の同伴を拒めるように書いているが、「著しい損害」、「やむを得ない理由」というのは、施設の管理者に相当高いハードルが課せられていると考えていたら、以下に私見とことわりつつも詳しい解説があった。
盲導犬・介助犬の入店拒否はどんな場合に認められるか? | 碁法の谷の庵にて - 楽天ブログ
 考えられる拒否できる例としては、法令に定める補助犬の条件をその犬が備えていない場合などであって、他の客の迷惑になるかもしれないから、というのはさすがに通りそうにない。

この人がこの日にやるべきであった事は、他のお客様の事を考え正しくルールを守ろうとしている店に百貨店の担当者や当事者の女性とともに涙ながらに説得にあたる事ではなく、百貨店内のウェルカムシールを貼っている店を探して、その店の理解と協力を褒めたたえ感謝の意を表す事と、シールを貼っている店の情報が無い不便さを実感した事を活かし、WEB上に毎日更新される協力店リストを公開する事であろう。

「もうあの涙は流させない」とか勘違いも甚だしいな。

障害があるとか無いとかなんて関係ない。まず大人としての常識を身に着けるところからが全てではないのかと思う。

記事の上っ面だけ読めば、一見強者の差別のように見受けられるが、見る角度を変えると弱者の横暴という側面が見えてくる。お店の事情も聞かず脊髄反射的にSNSに投稿するなど、良い大人のやる事ではないし、こんな事をしておいて補助犬の事を知ってほしいもくそもないだろう。犬の躾より人間の躾の方が必要なのではないか?
 こんな記述を読んだら、障害者がその障害を理由に特別扱い(特別扱いではなく、マジョリティと同じように行動できる条件整備であるが)を要求していることに憤っているとしか思えない。犬嫌い・犬アレルギーの人間のことも、マイノリティの権利の主張をくじくための手段にすぎないのだろう。