預かり金は返してくれ〜不動産業者でのトラブル未満のできごと

 転居のため、過日、不動産業者(宅建業者)をめぐって賃貸住宅を探した。いくつか物件を内覧したのだが、「不動産業者一番おすすめ」物件に行った時におおむね以下のような会話があった。
 予告しておくと、賃貸住宅を不動産業者に仲介してもらう際のトラブル事例を予習してから不動産業者に行ったのだが、残念なことに、その事例そのままの会話が展開した。
参考
大阪府/お金を払った後にキャンセルしたいが、お金は返金される? 
賃貸マンションの契約時に支払った申込金(相談事例と解決結果)_国民生活センター

「どうです。築浅で南向きで、家賃もそれほど高くはないでしょう」
「今まで見た部屋では一番いいかな。でも、駅からかなり遠いし、まだ、他の物件と比較してみたい」
「それでは部屋止めということではどうでしょう。手付けとして一万円を払っていただきましたら、他の方の申し込みを止めておきます。ただし、契約されなかった場合、手付けはお返しできません」
予告しておくと、宅建業者が預かり金(この場合は契約が成立していないのだから、手付けではなく、預かり金でしかないのだが)を返金しないという行為は違法だ。


宅地建物取引業法第47条の2第3項
宅地建物取引業者等は、前2項に定めるもののほか、宅地建物取引業に係る契約の締結に関する行為又は申込みの撤回若しくは解除の妨げに関する行為であつて、宅地建物取引業者の相手方等の保護に欠けるものとして国土交通省令で定めるものをしてはならない。

同法施行規則第16条の12第2項
宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと。

「今おっしゃった言葉の中にうそがありますね」
「・・・うそとおっしゃいますと」
「まだ、重要事項説明を受けてもいませんし、契約の意思決定をしているわけではないから、手付けではなく、預かり金でしょう。預かり金は返還しなければならないと宅建業法に定められていますよね」
「・・・・・それでは預かり金ということにしましょう」
追加すると重要事項説明というのは、物件の情報や契約の要点を記した重要事項説明書を交付し、宅地建物取引主任者が内容を説明する。この説明は契約の前に必ず行わなければならないのだが、これを受けていれば、宅建業者に契約の成立を主張されることもあるだろう。逆に重要事項説明をしていないのに、契約の成立を主張するというのは、、宅建業者自らが宅地建物取引業法違反をしていると宣言することだ。

アドバイスするなら2点

  1. 部屋止めの代価の領収書には必ず、「預かり金」と書いてもらい、念を押すなら契約の申し込みの撤回時には返金すると明記してもらうこと
  2. 重要事項説明を受けるのは契約の意思を固めてからにすること