そう言えば、天皇が帝国軍人に殺害される架空戦記もあったな

この記事を読んで思い出したこと
「懲罰」として、天皇や米大統領が殺害される怪獣映画を作ってほしい。 - 誰かの妄想・はてなブログ版

 以下、ある小説の結末を含んだ内容に触れます。

 思い出したのは、『日本本土決戦』(檜山 良昭)である。
 実際に立案されていた連合軍の日本本土上陸作戦が実施されていたらという想定の小説だ。
米国の原爆開発が遅れ、日本では継戦派のクーデタが勃発。1945年11月に米軍が南九州に上陸するという筋書きだが、「超兵器で日本が勝利」などという展開ではない。国民義勇戦闘隊として動員された国民学校の生徒や教師が、米軍の機銃掃射を受けて死ぬ、等の悲惨な状況の描写が続く。

 日本は米軍が関東地方に上陸しても松代に大本営を移転して戦争を続ける。最後は徹底抗戦派(というか、「日本は国体と心中しなければならない」派)の将校が、天皇をはじめとする政府首脳もろとも松代大本営の地下壕を自爆させてしまう。
 終幕は、アメリカ合衆国の大統領官邸で、日本人の死者が既に1500万をこえ、さらに500万をこえる餓死者が出るであろうことが語られる。日本の分断国家化と米ソの冷たい戦争のはじまりも匂わされる。
 とにかく救いのない終わり方だ。
 
 筆者も自分の小説が「原爆投下必要論」につながることを、おそれてか、扉部分の「筆者のことば」に以下を記している。

だが、誤解のないように書きそえるが、私は広島と長崎への原爆投下を決して肯定するものではない。私は原爆を憎む。

 それとは対照的な「中身を本当に読んだの」と言いたくなるような、裏表紙の推薦文を書いたのが、作家の森詠氏だ。

私は読後、しばし日本はかく戦い終わるべきだった、と瞑想にふけざるを得なかった。

 それではまるで作中の狂信的な徹底抗戦派将校だよ、と言いたくなった。

 この小説は、1981年に出版されたが、現在も日本は、こうした筋書きの小説がうけいれられる余裕を保っているだろうか。